読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

VR の健康上の問題

VR は面白いことができそうですし、2016年はこぞって HMD (Head Mount Display) 製品が発売されます。

しかし、目にとっては、子供の発育にとっては大丈夫なのか?という不安もあるでしょう。

www.moguravr.com

Oculus Rift には 13 歳以下は使うべきではないと書かれているそうです。なんとなく不安だ、心配だ、と言っているだけでは発展していかないので、理解することが大切だと思います。

そこで、3D立体視について学んでみました。理解した内容を整理してみたいと思います。

立体視の仕組み

奥行きの知覚

まずは仕組みを見ていきましょう。奥行きはどのように知覚されるのでしょうか?

立体に見える仕組みは、右目と左目に見える画像の差異にあります。まず、ディスプレイは無視して、紫で示した位置に光源があるとして考えていきます。紫の位置から目まで光が届く道筋は、赤線と青線のようになります。紫の位置から赤線と青線の道筋で光が目まで届くと、左右で異なる画像が届くことになります。日常生活のなかで光源を見るときは、左右の目で僅かに異なる画像を見ています。脳は左右で僅かに異なる画像を処理して、立体として見ています。

では、ディスプレイを使って立体映像を作り出すにはどうすればよいでしょう?

それは、ディスプレイの位置に赤と青で示した画像を表示すればよいのです。目からすれば、赤線と青線の交わる紫の位置に光源があるときと同じ状況になります。このとき脳は紫の位置に光源があると判断します。これによってディスプレイよりも奥に光源があるように見えます。

奥行きを知覚する場合には、左目が左の画像、右目が右の画像を見ていることから同側。同側で見たときの差ということで、同側性視差と呼ばれるようです。同側性視差により奥行きの知覚が起こります。

飛び出しの知覚

次は、飛び出しの知覚です。

考え方は奥行きと同じです。まず、光源が紫の位置にあるとして考えてみます。目からすると赤線と青線の方向から光が届くことになります。ディスプレイの位置に赤と青で示した画像を表示すると紫の位置に光源を置いた場合と同じ状況を作り出すことができます。赤と青で示した画像を見ると脳は紫の位置から光が届いたと判断することになります。これによってディスプレイよりも前に飛び出していると知覚します。

右目で左の画像、左目で右の画像を見ていることから異側。異側で見たときの差ということで、異側性視差と呼ばれるようです。異側性視差により飛び出しの知覚が起こります。

輻輳

遠近による瞳孔(黒目)の向きにも注目です。遠いときは平行に近く、近くなると寄り目になります。このように両目が同時に内側を向く動きを輻輳と呼ぶそうです。近くを見るときには輻輳が起きます。

健康上の問題

基本的な立体視の原理は以上です。ここからは健康上の問題を考えるにあたっての知識を増やしていきます。

瞳孔間距離の問題

まず、瞳孔間距離という言葉について知ります。

瞳孔間距離は単純で、瞳孔の中心の間の距離です。個人差があります。また、子供から大人になるに従って瞳孔間距離は広がっていきます。Oculus が挙げた13歳という数字の理由はここにあると考えられます。13歳くらいになれば、瞳孔間距離は定まっています。

では、瞳孔間距離は同側性視差にどのような影響を与えるでしょうか?

瞳孔間距離を狭くした場合と広くした場合を示します。

いずれの場合も赤線と青線の交わる位置が変わります。赤と青で示した画像は同じ画像です。狭くした場合は、赤線と青線の交わる位置が遠くなります。広くした場合は、赤線と青線の交わる位置が近くなります。すると、脳が処理した映像は遠くや近くになると考えられます。遠くや近くになるだけならば良いですが、実際には脳にとって立体に見えない映像になり、目を調節して立体に見えるようにします。目を調節するということは、瞳孔間距離が狭ければ目を離し、広ければ目を寄らせることになります。

同じように瞳孔間距離は異側性視差にどのように影響を与えるでしょう?

同側性視差ほどには影響はなさそうです。しかし、細かく計算したならば、同側性視差と同じように目の移動が必要になることがわかるでしょう。

脳が目の位置を調節することで立体視を実現しているとすると、長時間使用していると目が寄るか、離れるかすると考えられます。ディスプレイに映される画像は、ある瞳孔間距離を前提とした画像です。つまり、2つのカメラの間の距離であり、CGを作成するときの仮想的な2つのカメラの間の距離です(CGで3Dを2Dに見せるときにはカメラ位置を指定します)。画像の前提となっている瞳孔間距離と視聴者の瞳孔間距離が同じであることはまずないと思いますので、多かれ少なかれ目を調節することで立体に見えるようにしていると考えられます。

大人であれば目の位置は定まっているそうで、使用をやめれば数日で元に戻るそうです。しかし、子供の場合は目の位置が定まっていないので、目の位置が戻りづらいとも考えられます。子供と言っても幅広いですが、6歳がひとつの目安になるようです。6歳以上であれば、大人と同様に問題なさそうだとの調査結果があるとのこと。冒頭で紹介した記事の動画を参照してください。

瞳孔間距離の問題の解決方法

では、瞳孔間距離の違いによる問題を解決するには、どうすればいいと考えられるでしょうか?

ここは私の想像で、計算や実験をして検証していないため正確性を欠く内容ではあります。しかし、考え方としては参考になるのではないかと思っています。

いずれも右側の図は画像の瞳孔間距離と視聴者の瞳孔間距離が一致していない場合です。左側の図はディスプレイの位置を調節して、期待する映像になるようにしています。この図を見る限りでは、ディスプレイの位置を調節することで瞳孔間距離の違いによる問題を解決できそうです。

ここから考えられるのは、画像を投影するディスプレイは左目用と右目用に分かれており、ディスプレイの距離を調節できる HMD を使う方が良いと思われます。Cardboard のように、ひとつのディスプレイを半分に分割する場合には、画像間の距離を殆ど調節できません(調節すると表示される画像の幅が狭くなる)。スマホHMD にするのは、残念ながら遊び程度にしておくのが良いのかもしれません。

ピント調節の問題

ここまで、瞳孔間距離により起こる問題を見てきました。最後は、ピント調節に関わる問題を見ていきます。

目のピント調節は、目の水晶体の厚さを調節することで行なわれます。ピント調節によって、光源をはっきりくっきり見えるようにします。視界の中心はくっきり、周辺はぼやける。これは視線の先に合わせてピント調節が行われているためです。

では、ピント調節の様子を段階的に見てみます。

左から見ていきます。光源から発生した光は四方八方に進んでいきます。四方八方に進む光の一部を紫線によって示しています。進む光は水晶体を通過すると再び集まります。はっきりした映像が見えるときは、網膜で光源の光が集まっています。

中央は光源を離しています。光源を離すと水晶体に入る光の角度が変わります。これにより、光の集中する位置が変わり、光源の光が網膜で集まりません。光源の光は網膜の広い範囲に当たるため、映像はぼやけます。

右は水晶体の調節により、再び映像がはっきりとする様子です。水晶体に入る光の角度は中央と同じですが、水晶体の厚さを変えることにより光の集中する位置を変えます。水晶体を調節して映像がはっきりしたところで調節が終わります。

日常で起こるピント調節は以上のようになっています。では、VR で使用している仕組みでは、ピント調節はどのようになるでしょう?

自然なピント調節では、遠くの物体から発せられる光に合わせてピント調節が行われています。一方、VR のピント調節では、光源がディスプレイになるためディスプレイから発せられる光に合わせてピント調節が行なわれます。脳は視差によって遠くに見えていると判断していますが、水晶体は近くにピントを合わせていることになります。

水晶体が近くにピントを合わせているということは、視力に影響を与えそうです。遠くを見ているように感じているので、視力には問題ないように思えますが、水晶体が近くを見る状態で固定されてしまうと遠くを見辛くなります。長時間の使用は避けた方が良いかもしれません。

自然な状況とのズレ

また、ピント調節と輻輳(両目が内側を向く動き)が自然な状況と異なります。輻輳は遠くを見ている動きにも関わらず、ピント調節は近くを見ていることになります。脳にとっては異常な状況です。これが疲れになったり、人によっては気持ち悪くなったりという症状につながるのではないかとのことです。

ここまで理解したことが間違えていなければ、水晶体でのピント調節を自然な状況と合わせるには、ディスプレイの仕組みから変えなければいけないよう思います。安全に VR を使うためには、まだまだ技術的な課題があるということでしょう。

まとめ

VR は面白いことができそうで、色々と遊んでみたくなります。しかし、瞳孔間距離の問題、ピント調節の問題、自然な状況とのズレの問題があります。専門家の研究していることから学びつつ、無理のないように気をつけながら使い、VR 自体が悪者にならないようにしたいものです。技術的に課題が解決されることにも期待して VR を使っていきたいと思います。

参考文献